これならわかるOSSライセンス その6

江端コンサルタント   長年OSS業務に携わり続けてきた、OSSマーケティングのスペシャリスト。

<得意分野>
行政書士の資格を所有し、IPA国際標準化センターリーガルワーキンググループ主査としても活躍。
OSSライセンスに非常に詳しく、OSSを取り扱う各社からのコンサルティング依頼が殺到中のスペシャリスト。

<主な活動>
・OSSライセンス&コンプライアンストレーニング
・OSS組込みコンサルタンティング
・OSS関連コラム提供

行政書士/コンサルタント
エムキューブ・プラスハート株式会社
(IPA国際標準化センター主査リーガルワーキンググループ 主査) 江端 俊昭


実際、OSSライセンスは「配布」に対する条件規定で構成されているといっても過言ではありません。

これは、先にも述べましたが、The Open Source Initiative(OSI)が発表した「The Open Source Definition」(OSD)の冒頭、
『The distribution terms of open-source software must comply with the following criteria:-OSSの配布条件は、
以下の基準を満たしていなければなりません。』と配布条件に言及していることからも、
ご理解頂けるものと思います。

また、OSSライセンスは、当該ライセンスごとに、その条件規定が多様であるとも述べましたが、
勿論、OSDに従っているものについては、その基準を満たした上での条件規定であることは言うまでもありません。

では、その基準について、改めてOSDの条項をみてみましょう。
『1. Free Redistribution
The license shall not restrict any party from selling or giving away the software as a component of
an aggregate software distribution containing programs from several different sources.
The license shall not require a royalty or other fee for such sale.

第1条 再配布の自由

「ライセンス(OSSライセンス)は、出自の様々なプログラムを集めたソフトウェア配布物の構成要素として、
ソフトウェアを販売あるいは無料で配布することを制限してはなりません。

ライセンスは、このような販売に関して使用料その他の報酬を要求してはなりません。』

一見、矛盾しているようですが、OSSのライセンサーを「A」、ライセンシーを「B」そして当該ライセンス契約の
当事者である「A」「B」以外の第三者を「C」(この条項では”any party”)として、この条項を読んでみましょう。

すると(「A」が権利を有する)ソフトウェアを(「B」が「C」に)販売(有償)しても無償で配布しても構わないが、
(「B」が「C」に)ソフトウェアを(有償無償にかかわらず)配布する際は、(「A」が「B」に対する)使用料や
その他の報酬を要求する条件をつけてはならないと読めます。

よく、「OSSは無償」と表現されていることから、「OSSはタダ」と認識されている方も少なくないと思いますが、
無償とは、この条項で言えば、ライセンシーによる「配布権」の行使についてライセンサーがその許諾を
無償で行うことを求められているのであって、ソフトウェア自体の無償配布を求められているのではないことがわかります。

逆に、有償のOSSを不思議に思う方もいらっしゃいますが、こちらが矛盾していないこともおわかり頂けると思います。