これならわかるOSSライセンス その2

江端コンサルタント   長年OSS業務に携わり続けてきた、OSSマーケティングのスペシャリスト。

<得意分野>
行政書士の資格を所有し、IPA国際標準化センターリーガルワーキンググループ主査としても活躍。
OSSライセンスに非常に詳しく、OSSを取り扱う各社からのコンサルティング依頼が殺到中のスペシャリスト。

<主な活動>
・OSSライセンス&コンプライアンストレーニング
・OSS組込みコンサルタンティング
・OSS関連コラム提供

行政書士/コンサルタント
エムキューブ・プラスハート株式会社
(IPA国際標準化センター主査リーガルワーキンググループ 主査) 江端 俊昭


前回、OSSを利用する際には、OSSライセンスの利用条件を確認することが大切と述べましたが、
このOSSの利用とは、著作権を行使することをいいます。

ところでこの著作権ですが、その内容は支分権と呼ばれるいくつかの権利から構成されている集合体を称したもので、
単一の権利ではありません。
また、著作権を構成する支分権は「著作財産権」と「著作者人格権」に分類することができます。

我が国の著作権法では、「著作財産権」としては複製権、上演権・演奏権、上映権、公衆送信権(送信可能化権、公に伝達する権利を含む)、口述権、展示権、頒布権、譲渡権、貸与権、翻訳・翻案権、二次的著作物の利用権。
そして「著作者人格権」としては公表権、氏名表示権、同一性保持権が規定されています。

「著作財産権」と「著作者人格権」の違いですが、著作物の権利を保護する「著作財産権」は文字通り財産的な性格を有しており、その権利の一部または全部を譲渡や相続等により移転することができます。

OSSライセンスの中に「Author:著作者」と「Copyright Holder:著作権者」という文言を見かけることがありますが、
著作物を創作する著作者はもちろん、著作権者になり得るのですが、権利の移転により、直接、創作に携わらなくても
著作権者になり得る場合もあるため、条項の内容によって使い分けているケースもあります。

著作財産権をもって狭義の「著作権」と称されることもあります。
一方、「著作者人格権」は、著作者であることを保護する権利であり、移転の対象にあたらないこともあり一身専属権とも称されています。
「著作者人格権」は著作者の死亡によってその権利は消滅しますが、著作者の死後でも一定の範囲において保護されることになっています。

あなたが、他人の著作物を利用する場合、譲渡や相続によらなければ、著作者から利用の許諾を得ることになりますが、著作権者はこの許諾について支分権ごとにこれを行なうことができるだけでなく、利用に伴う期間や地域の限定等種々の条件を自由に規定することができます。

あなたが、あるOSSについて、自由に複製ができるとするならば、それは、そのOSSの著作権者が専有している複製権についてあなたの行使を許したことにはなりますが、必ずしも無条件で権利を行使できるということではありません。
従って、OSSライセンスを確認する際は、利用を許諾された支分権は何か?利用にあたっての条件は何か?にまず着目することが望ましいでしょう。