これならわかるOSSライセンス その7

江端コンサルタント   長年OSS業務に携わり続けてきた、OSSマーケティングのスペシャリスト。

<得意分野>
行政書士の資格を所有し、IPA国際標準化センターリーガルワーキンググループ主査としても活躍。
OSSライセンスに非常に詳しく、OSSを取り扱う各社からのコンサルティング依頼が殺到中のスペシャリスト。

<主な活動>
・OSSライセンス&コンプライアンストレーニング
・OSS組込みコンサルタンティング
・OSS関連コラム提供

行政書士/コンサルタント
エムキューブ・プラスハート株式会社
(IPA国際標準化センター主査リーガルワーキンググループ 主査) 江端 俊昭


今回も、引き続きOSD条項について解説します。

『2. Source Code
The program must include source code, and must allow distribution in source code as well as compiled form.

Where some form of a product is not distributed with source code, there must be a well-publicized means of
obtaining the source code for no more than a reasonable reproduction cost preferably, downloading via the
Internet without charge.

The source code must be the preferred form in which a programmer would modify the program.

Deliberately obfuscated source code is not allowed.

Intermediate forms such as the output of a preprocessor or translator are not allowed.

第2条 ソースコード
「オープンソース」であるプログラムは、ソースコードを含んでいなければならず、コンパイル済形式と同様に
ソースコードでの配布も許可されていなければなりません。

何らかの事情でソースコードと共に配布しない場合には、ソースコードを複製に要するコストとして妥当な額程度の費用で
入手できる方法を用意し、それをはっきりと公表しなければなりません。
方法として好ましいのはインターネットを通じての無料ダウンロードです。

ソースコードは、プログラマがプログラムを変更しやすい形態でなければなりません。

意図的にソースコードを分かりにくくすることは許されませんし、プリプロセッサや変換プログラムの出力のような
中間形式は認められません。』

本条は、OSD準拠のOSSライセンスが適用されるプログラムを配布する際に、配布先に対して、
ソースコード配布の用意を義務付ける規定です。

なぜソースコードを配布する必要があるのでしょうか?

これはOSSに付与される著作権法上の権利の許諾と関係しています。
通常、プログラムはバイナリーコード(実行形式)で配布されますが、これを単に使用(実行)する上で
不都合はありませんし、再配布をしたい場合でも、複製権や配布権が許諾されていれば、
問題なくこれを行うことができます。

では、改変したい場合はどうすれば良いでしょうか?

バイナリコードのプログラムに対して改変を行うことは、決して一般的とはいえません。

事実、バイナリコードはこれに相当するソースコードから生成されます。

つまり、改変権の行使には、ソースコードは不可欠なのです。

そこで、OSSの配布は原則、ソースコードによる配布を考慮し、バイナリコードのみを配布した場合でも、
改変権の許諾を担保するために、ソースコードを提供する用意が規定されているのです。

この時、ソースコードの入手に対する費用負担について、これが実費程度に抑えられているのは、
バイナリコードの受領者が、高額を理由にソースコードの入手が叶わず、結果、改変権が許諾されているにもかかわらず、
改変ができないという矛盾を防ぐための配慮と解釈できますし、また、中間形式の配布を認めない規定も
同様と解釈できます。

OSD準拠とされるOSSライセンスであっても、特にバイナリコードの配布に伴うソースコードの配布についての
明示のないことから、そのライセンスが提供されたOSSにおいては、ソースコードを提供する義務がないと
理解されている方も少なくありませんが、改変権が許諾されている以上、受領者によるソースコードの入手は
許可されているとの解釈が妥当といえるでしょう。